武尊がいた時代
2026年4月29日、格闘家・武尊が引退した。
前回1ラウンドで敗れたロッタンに勝ち、ベルトを巻き、最後はリングに突っ伏して絶叫していた。
本来なら会場に駆けつけていたはずだった。でも、あいにく海外にいた僕は、iPhone越しにその瞬間を見届けた。
画面越しでも、込み上げてくるものがあった。
前回、こんな気持ちになったのは、レオナ戦に勝った夜だった。

父と新生K-1と、僕の格闘技
父の影響で、子どもの頃から格闘技を見て育った。地元が荒れていたこともあり、護身のために柔道もやっていた。
PRIDEやDynamite!!、K-1に夢中になり、新生K-1が始まった頃からは武尊という存在を追い続けてきた。
K-1史上初の3階級制覇。那須川天心とのTHE MATCH(これも会場で観た)。ONEへの移籍。スーパーレック戦(これも会場で観た)。そして、ロッタンに1ラウンドで沈められた夜。
勝った試合も、負けた試合も、全部見てきた。
その武尊が、現役最後の試合でロッタンにリベンジした。2ラウンドに左フックで2度のダウンを奪い、最後は5ラウンド、右ストレートでTKO勝ち。ONEフライ級暫定王者となった。
漫画のような結末だった。
でも、その一言では片付けられない。
5331日という現役生活の積み重ねがあったからこそ、この結末には重みがある。
武尊は、キックボクサーを超えた存在だった
あらためて感じたのは、武尊という存在の大きさだった。
試合後、SNSにはジャンルを超えて格闘家たちの言葉が溢れていた。
ボクサーも、総合格闘家も、キックボクサーも。普段は交わることの少ない選手たちが、一人の引退に言葉を寄せていた。
武尊は、いつからか一団体を代表する選手ではなくなっていた。
日本格闘技そのものを背負う存在になっていた。
試合後のマイクも感動的だった。
「ONEだけじゃない。K-1、RISE、KNOCK OUT。どこの団体がすごいとかじゃない。格闘技がすごいんですよ。」
日々、格闘技に生きる活力をもらっている自分も、本当にそう思う。
最後の最後まで、自分のためだけではなく、格闘技界全体の未来を語る。
そんな言葉が自然に出てくる選手は、武尊しかいない。
50戦45勝5敗、27KO
数字だけ見ても十分に伝説的なキャリアだ。
でも、武尊の本当の強さは戦績だけではない。
どんな相手でも倒しにいく。勝っていても前に出る。そのファイトスタイルが、会場を何度も熱狂させてきた。
武尊の試合に、「今日はハズレだった」と思ったことは一度もない。
武尊、本当にありがとう。
あなたがいたから、新生K-1という時代は、僕にとって特別なものになった。
素晴らしい時代でした。
本当に、お疲れさまでした。
